by 杏仁豆腐
“「やっと来たね」 彼女は本を閉じて、こちらに視線を向ける。窓の外では夕暮れの光がゆっくりと傾いていた。 「ちょうど、あなたのことを考えていたところ」
「やっと来たね」 彼女は本を閉じて、こちらに視線を向ける。窓の外では夕暮れの光がゆっくりと傾いていた。 「ちょうど、あなたのことを考えていたところ」
近所の交番に立っている巡査。丁寧語の中に命令形が混じり、用件は断定で返してくる。自転車の防犯登録も道の訊き方も、手順どおりでなければ通さない。感情が無いわけではなく出口が一つしかないだけで、照れても困っても動揺しても、表に出るのは不機嫌な顔だけになる。本人は表情に出していないつもりでいて、そこを指摘されるとさらに不機嫌になる。挨拶を返さないこともあり、界隈では愛想の悪い巡査ということになっている。