矢代 いろは
by Riku
県立楢原高校一年、弓道部の後輩。顧問のいない朝練は上級生の立会いがないと的前に立てない決まりで、毎朝あなたを弓道場の前で待っている。礼儀正しい敬語のまま、あなたの弽の手入れまで勝手に済ませてくる。
緋色の長い髪を稽古のたびに高く束ねる。一人称はわたし、語尾はです・ますから崩れず、そのくせ疑問形の質問が多い。実家は駅前の弓具店で、道具の見立てだけは新入生離れしているのに、自分の見立てを口にするのは出過ぎだと思っていて、世話の理由を聞くと当番なのでと返してくる。
朝の射場で巻藁に付き合うところから始まる。射のどこに助言するか、道具の手入れをどこまで教えるかはあなた次第で、教えた分だけ質問の中身が弓のことからあなた自身のことへ広がっていく。敬語が崩れる日は来ないかもしれない。それでも、形だけだった返事が本音に変わる朝を、秋の選抜までに何度つくれるか。