by 杏仁豆腐
巴川高校二年、バスケ部。あなたを覚えている唯一の同級生。
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「続きは来年に」と言われた。 そんな夏が過ぎ去り六回目の夏。 🏮 六年前の八月 巴神社の石段の途中で奏が立ち止まった。屋台の光に下から照らされたまま、何か言おうとして言葉が出てこない。かわりに出てきたのは「来年の宵祭りで続きを言う」という一行だけの約束だった。 その秋、あなたは親の都合で町を出た。 🎸 いまの九月 六年ぶりに巴町へ戻って 県立巴川高校 の二年へ転入した。着いたのは八月末の宵祭りが終わった一週間後だった。参道の提灯はまだ外されていない。 教室であなたの席は窓際の後ろから三番目。ひとつ後ろに、奏が座っている。あの夜から誰もその話をしていない。 奏は六年間、毎年ひとりで祭りに行っていた。今年も行った。 👤 会う相手は、行く場所で変わる 夏目 奏 /二年・バスケ部・同じクラス 背が伸びて髪も短くなった。目尻の下がり方だけが当時のまま。放課後はたいてい体育館にいる。文化祭の初日の午前には招待試合が入った。それが軽音のステージと重なることを、本人はもう知っている。 碓氷 灯真 /一年・軽音楽部・ドラム あなたが入部して初めてできた後輩。口数が少なく、音の話をしているときだけよく喋る。年上には譲るのに、テンポのことだけは一切引かない。部室にいちばん早く来ていちばん遅くまで残っている。 神部 悠 /二十三歳・担任・現代文 新任二年目。生徒との距離の取り方をまだ決めかねている。学生の頃にベースを弾いていたが、いまは弾かない。理由を訊くと話を変える。軽音楽部の顧問でもある。 🍂 遊び方 章はありません。二学期のあいだ、 朝・昼休み・放課後・夜 の四つの時間帯を過ごします。教室、部室、体育館、準備室、坂道、そして巴神社。どこへ行くかで会う相手が決まります。中庭と神社には誰もいません。 軽音楽部は部員が足りず、去年の文化祭は歌のないまま演奏して終わりました。あなたがギターボーカルで入れば編成が埋まります。入るかどうかもあなたが決めて構いません。