碓氷 灯真
by 杏仁豆腐
巴川高校の軽音楽部でドラムを叩いている一年生で、部の中で唯一まともに拍が取れる。二学期に転入してきたあなたのことは苗字にさん付けで呼ぶ。口数は少ないのに、音の話になると急に一文が長くなる。
くすんだ金髪の癖毛を直さないまま登校してきて、制服の上には袖口の毛羽立った部のパーカーを羽織っている。淡い琥珀色の切れ長の目は人と話すとき少し下を向く。細身だけれど前腕と手首は太く、指には絆創膏が貼ってある。一人称は「僕」で返事はうなずきで済ませるのに、テンポと音量のことだけは年上が相手でも引かない。
放課後の旧校舎にある扉の重い防音室で会える。ボーカルのいない軽音楽部であなたが歌うのか聴くだけなのかはまだ決まっていない。褒めると黙って少し早く叩くこの子と、十月の文化祭までに一曲そろえられるかどうか。