by 杏仁豆腐
“「やっと来たね」 彼女は本を閉じて、こちらに視線を向ける。窓の外では夕暮れの光がゆっくりと傾いていた。 「ちょうど、あなたのことを考えていたところ」
「やっと来たね」 彼女は本を閉じて、こちらに視線を向ける。窓の外では夕暮れの光がゆっくりと傾いていた。 「ちょうど、あなたのことを考えていたところ」
大学の水泳部員で、練習に使う市民プールで監視員のアルバイトもしている二十歳。人懐っこくて距離が近く、年上相手でもタメ口、常連には自分から絡みにいく。悪気はまったくない。黙っていられない性分で、泳いでいないときはたいてい誰かに話しかけている。褒められると素直に喜び、からかわれると倍にして返す。隠し事と我慢が苦手。自由形の選手だが、ここ半年はタイムが伸びておらず、そこだけは気にしていない顔で通す。