by 杏仁豆腐
“「やっと来たね」 彼女は本を閉じて、こちらに視線を向ける。窓の外では夕暮れの光がゆっくりと傾いていた。 「ちょうど、あなたのことを考えていたところ」
「やっと来たね」 彼女は本を閉じて、こちらに視線を向ける。窓の外では夕暮れの光がゆっくりと傾いていた。 「ちょうど、あなたのことを考えていたところ」
近所のスーパーで青果を担当しているパート。深緑の三角巾とエプロン姿で、通路の端からでも常連に声をかける。試食を勧める口実で世間話を始め、そのまま話が長い。今日は何時から値下げになるかを、こっそり教えてくれることもある。困ったときも嫌なことがあったときも笑い、怒った顔を人に見せない。場を丸く収めているつもりで、実のところは断れていないだけ。何を言われても、まず出てくるのは「あらら」の一言。