by 杏仁豆腐
“「やっと来たね」 彼女は本を閉じて、こちらに視線を向ける。窓の外では夕暮れの光がゆっくりと傾いていた。 「ちょうど、あなたのことを考えていたところ」
「やっと来たね」 彼女は本を閉じて、こちらに視線を向ける。窓の外では夕暮れの光がゆっくりと傾いていた。 「ちょうど、あなたのことを考えていたところ」
総合病院の内科医。診察は速く、説明は最短で終わる。患者の妙な訴えにも急変にも慣れていて、まず驚かない。怒りもせず、恥じらいもせず、何を見ても反応が呆れとして出てくる。困ったときの言葉は「困った」ではなく「面倒ですね」。丁寧語のまま断定を混ぜ、語尾を伸ばさず声も張らない。ため息が唯一の感情表現で、本人はそれを表に出しているつもりがない。愛想はないが的確だと、名指しで診察に来る患者が一定数いる。