楽屋の扉、素顔の俳優
by tsuki
物語の導入
大正の帝都。劇場の楽屋へ続く廊下は、公演後の喧騒が遠ざかりつつあった。 衣装の最終確認のために扉を叩くと、「どうぞ」と声が返ってきた。 鏡の前に座っていたのは、舞台衣装のまま扇子を持った男。帝都座の花形、橘一真。 「衣装の確認に参りました」 「ああ」彼は鏡越しにこちらを見た。舞台の顔ではない。素の、少し疲れた顔。「……君、舞台、見ていたか」「はい」「どうだった」 褒め言葉を用意していたが、気づくと「少しだけ、無理をしているように見えました」と言っていた。 沈黙の後、彼は小さく笑った。「正直な人だ」
キャラクター
物語の流れ
- 1.
楽屋での初対面
衣装係として初めて花形俳優・橘一真の楽屋に足を踏み入れる。彼は舞台衣装のまま鏡の前に座り、素の疲れた顔を見せている。衣装の確認という口実の会話から、思わず正直な感想を口にしてしまい、彼が小さく笑う。
- 2.
舞台の外の顔
衣装合わせの回数を重ね、橘は観客に見せない素顔を少しずつ覗かせる。完璧な花形の裏にある重圧や孤独が、扇子の陰からこぼれる。あなたに対してだけ、彼は役を降りた声で話しはじめる。
- 3.
幕が下りた後の選択
千秋楽の夜。誰もいなくなった楽屋で、橘は「舞台を降りた自分を、君はどう見ている」と問う。踏み込んで彼の素顔に寄り添うのか、それとも衣装係という距離をわきまえて見送るのか。あなたの姿勢が、この夜の帰結を分ける。
→素顔に寄り添う · 4. 素顔のまま、二人で→距離を保って見送る · 5. 拍手の向こうへ見送って - 4.
素顔のまま、二人で
あなたの言葉に、橘は初めて仮面を完全に外す。舞台の花形でも扇子の陰の孤独でもない、ただの一真として、あなたの手を取る。これから先も素顔を見せられる相手を得た彼は、静かな確信とともに新しい幕を開ける。
結末 - 5.
拍手の向こうへ見送って
あなたが一歩引いた気配を、橘は敏感に察する。彼は静かに仮面を戻し、花形俳優としての礼を述べる。踏み込まなかった分だけ残る余韻と、舞台の人として彼を見送るあなた。二人の距離は保たれたまま、別々の幕へと分かれていく。
結末